今日の一句 #329

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    やさしくはしないで仮病なんだから  山本知佳子

     

     

    新年度が始まって半月余り。

    新入生や新入社員じゃなくたって

    なにがしか高揚感のある日々だ。

     

    はじめよう。

    もっとがんばろう。

     

    ところがその「もっと」が

    四月病なんてのを引き起こすことがあるらしい。

    すなわち、気持ち前向きにダッシュし過ぎると

    知らないうちにストレスをため込み、

    体調にも影響する場合が

    ・・なんて、あなたにも思いあたるフシありますか。

     

    と、こんな句に出会った。

    ふっと心がゆるむ。

    凹んでるときはほっといてほしくて

    けど、さりげないやさしさが

    やっぱり効く。

     


    (「川柳びわこ」第658号/びわこ番傘川柳会 2018年4月)


    今日の一句 #328

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      ソロホーマー天の一角稲光  近江砂人

       

       

      連日のSho Time !”

      政治も社会も暗澹たるニュースが続く中、

      二刀流・大谷翔平選手の活躍は痛快のひと言!

       

      そんな大谷選手に敬意を表して

      今回はカーンとホームランの一句を。

      まさにスケールでっかく、

      いささか劇画チックでもありますが

      作者は明治生まれの川柳家、近江砂人(1908-1979) 。

      「番傘」の同人で、創設者・岸本水府没後は

      同誌主幹、後に会長を務めました。

       

      さてもさても。

      もはや劇画を超えたといわれるスーパーヒーローは

      異星人疑惑まで持ちあがって

      一体どこまで進化していくのでしょうか。

       


      (「三省堂 現代川柳必携」/田口麦彦編 三省堂)


      今日の一句 #327

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        バリバリと重機のような若い顎  真島清弘

         

         

        佐賀の「卑弥呼の里川柳会」が全国に募る

        「第6回 卑弥呼の里誌上川柳大会」の入選句。

        題は「固い」。

        いやまったく、まったく

        「重機のような」とは秀逸な比喩だ。

         

        こちとらごま煎餅一枚かじるのだって

        恐る恐るなのに、

        目の前の若もんは

        もうどんな岩石も噛み砕けそうな勢いで

        なんでもかんでもバリバリと

        しかもまあよう食うことよ。

        いやしかしそれでこそ若さであるなあ、

        頼もしいなあ。

        なんて作者流のエールの一句かも。

         


        (「第六回 卑弥呼の里誌上川柳大会 入選句集」

         /卑弥呼の里川柳会 2018年4月)


        今日の一句 #326

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          この土は埋葬の土種の土  広瀬ちえみ

           

           

          ほっとして、そして力のもらえる句だ。

          いのちあるもの、

          すべてに帰る場所がある。

          そこから先のことはわからない。

          でも、きっとなにかにつながっていくのだろう。

           

          ふと。

          「埋葬」はいのちに限らないなとも思った。

          大きな悲しみや悔しさや。

          そんなものも土にほうむれば

          やがてしっかりと種を育む土になる。

           

          信じてみようかな。

          新年度、始まるしね。


          (「川柳杜人」2018年春号)


          今日の一句 #325

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            芸術に縛られている美術展  いわさき楊子

             

             

            「芸術は爆発だ」

            かの岡本太郎の至言。

             

            半世紀前に手掛けた太陽の塔が

            今週から内部公開され、

            岡本太郎は今再び、時の人だ。

             

            振り返るに、小学生の時に万博へ連れられ、

            そこで初めて「世界」にふれた。

            しかしそびえたつ太陽の塔は、

            今も時代を突き抜けて

            噴火し続けている気がする。

             

            さて掲句。

            自由を標榜する作品たちが、

            まだまだ「芸術」なんて概念に縛られているのを

            シニカルに衝く。

            どきり。


            (「川柳スパイラル」第2号 2018年3月)

             


            今日の一句 #324

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              くしゃみして忘れてしまう合言葉  坂東乃理子

               

               

              いや困りましたね。

              って誰がどう困るのかは

              読み手の想像次第。

               

              でもいささか時代がかった「合言葉」が

              なんだかお茶目で、メルヘンチックで

              つい微笑んでしまう。

              主人公は少女でもおじさんでも

              忍者でもいいし、

              あ、森のくまさんとかも、ありっしょ。

              1句からぽぽっと生まれる

              小さなおはなしが勝手に楽しい。

               

              ックシュン。

               

              あら、今のくしゃみはどなたです?

               


              (坂東乃理子川柳集『おもちゃ箱』 編集工房 円)


              今日の一句 #323

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                よろしかったですかあ? よろしくありません  碾鸛石

                 

                 

                昨日、出先でうどん屋に入った。

                きつねうどんをオーダー。

                と、すかさず店員さんから

                「ご飯は大丈夫ですか?」

                はいっ?

                 

                きけば、このお店、

                ランチタイムには無料で白飯を所望でき、

                プラス50円でじゃこご飯に変更もOK。

                つまり先の質問を補足すると

                「(こういうサービスやっていますけど)

                ご飯はお付けしなくてよろしいでしょうか?」

                ってことですね。

                 

                しかしいつからですかね。

                本来の「よろしいですか」が

                「大丈夫ですか?」とか

                「よろしかったですか?」なんて

                ナゾの過去形に取ってかわられたのは。

                 

                そんな日本語の乱れを

                苦笑でやり過ごすこともできず、

                さらには句にまで仕立ててしまった作者に

                ニンマリと1票。

                 

                 寅さんの真似してみても小半日      霜石

                 いいんだいいんだ金はあとからついてくる

                 臍ちょっと曲げて全身川柳家

                 


                (碾鸛石句集『無印笑品』/東奥日報社)


                今日の一句 #322

                0

                   

                  ぽんこつぽんこつぽんこつ さぁ行こう  丸山あずさ

                   

                   

                  ポンコツ車が走る。

                  ぽんこつぽんこつぽんこつ……

                  なんともまったくマイペース。

                  でもリズムのどかにいい感じ。

                   

                  あ、いや。こんな読みもできる。

                  ぽんこつ3つは呼びかけだ。

                   

                  「ほらそこのぽんこつ、そっちのぽんこつ、

                   こっちのぽんこつよ。

                   仲間はそろった、さあ行こう」

                   

                  ハイヨ! 

                  思わず返事してしまう。

                   

                  口ずさんだ人から春になるみたいな。

                  ちょっとフシギな句です。

                   


                  (「触光」51号/2017年2月 川柳触光舎)


                  今日の一句 #321

                  0

                     

                    梅咲いて庭中に青鮫が来ている  金子兜太

                     

                     

                    俳人 金子兜太さんが世を去った。

                    享年98歳。

                    まさに巨星墜つ。

                    俳壇での功績はここに記すまでもないけれど、

                    学生時代より川柳をよく読み、

                    川柳人とも折にふれ関わってこられた

                    川柳シンパでもあった。

                     

                    手元に柳誌「きやり」の古いインタビュー記事がある。

                     

                    「本当の意味で、

                     川柳というものに興味をもち出したのは戦後、

                     古川柳と現代川柳の論争が起こってからですね。

                     いずれをよしとするか……と。

                     山村祐さんや河野(春三)さん達が

                     登場してきて激しい論争を展開した。

                     僕は山村祐さんとは割合接触があり、

                     大塚の家などへ行って座談会をやったこともありますよ」

                     

                    「大塚の家」とは

                    川柳人 山村祐が営んでいた旅館「夕月荘」のことだろう。

                    川柳革新運動盛んな頃、

                    気鋭の俳人や歌人も集っては

                    侃侃諤諤、議論をたたかわせた伝説のスポットだ。

                    まだ駆け出しの寺山修司なども顔を出していたという。

                     

                    川柳の「鋭い穿ち」や「乾いた諧謔」を愛した氏。

                    ジャンルの垣根を軽やかに超えた交流は

                    互いの作品や活動にどんな影響を与え合ったのだろう。

                     

                    掲句は代表作の一つ。

                    青鮫は時代や思想をも超えて

                    まったくこれからもどこに出没するかわからない。

                     


                    今日の一句 #320

                    0

                       

                      如月のはたらく空とはたらく木   なかはられいこ

                       

                       

                      清々しい。

                      声に出して読むといっそう、だ。

                      如月の「き」に始まり

                      「はたらく」の「は」と「く」で

                      ぱっと口を開いたりすぼめたり。

                      それをテンポよく2度繰り返して

                      最後に再び「き」っ、と口を横一文字に引っ張る。

                      と、木は気にもつながって

                      ぽんとやる気スイッチが入った気分。

                       

                      本作、なかはられいこさんが発行人を務める

                      「川柳ねじまき」最新号から引く。

                      15の個性が結集した1冊。

                       

                       あとがきを長めに書いてぜんぶ消す   二村典子

                       煙しか出ないドラゴンのあくび    猫田千恵子

                       箸立てにあけっぴろげな南風      早川柚香

                       昔から浅丘ルリ子三つ上        丸山 進

                       しっかりと善意の底は閉じておく    三好光明

                       あ、と声立ててあっけなくわたし    八上桐子

                       入り口のことしか書いてない童話   米山明日歌

                       鶏頭のぼんやり待っている空き家    青砥和子

                       戦いはスターウォーズへと続く     安藤なみ

                       焼香の順にならんでそれっきり     魚澄秋来

                       列島は脇の下までサクラさく      犬山高木

                       分身の蝙蝠の低空飛行         妹尾 凛

                       縄文の顔でたずねてくる長姉     中川喜代子

                       その場所が空いたはずだが 半夏雨  瀧村小奈生


                      (「川柳ねじまき #4」 ねじまき句会  2018年)

                       

                      *************************

                       

                      お知らせです♪

                      NHKカルチャー西宮ガーデンズ教室(兵庫)にて

                      4月から川柳講座を新開講します。

                       

                      「キラッと川柳 〜こころを詠む〜」

                       毎月第4火曜 10:30〜12:30 

                      https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1138606.html

                       

                      鑑賞と実作の2本立てで川柳をたっぷり楽しみます。

                      初心の方もお気軽にどうぞ。

                       


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