今日の一句 #425

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    いざこざの小さな町につくしんぼ  水野のぶ子 

     

     

    小さな町ゆえのいざこざに

    つくづくうんざりしつつ

    今年の初つくしんぼに

    「あ」。

     

    主人公は、やっぱりこの町を

    愛しているんだろう。

    この町に訪れる

    小さな春も。

     


    (『現代川柳かもめ舎アンソロジー WAVE 2009-2018』

         /2018年)


    今日の一句 #424

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      まだ何も出来てないからまだ希望  田辺与志魚 

       

       

      てらいのないポジティブさが

      すとんと腹におちる。

       

      もっとも、「まだ希望」と書くにいたるまでには

      きっといろんな葛藤があったはず。

      そしてひょっとしたら。

      こんな風に句に書くことで

      「もうトシだから」なんて

      ついネガティブになりがちな自身を

      うんにゃ!と奮い立たせているのかも。

       

      まだ何も出来てないけど、

      ではなく

      「出来てないからまだ希望」。

      深い吐息からの鮮やかな転換。

       


      (『川柳作家ベストセレクション 田辺与志魚 逃げのびてラストシーンの中にいる』

        /新葉館出版  2018年)


      今日の一句 #423

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        濡れているナビの知らない冬の道  重森恒雄 

         

         

        はや立春も過ぎた。

        例年のご挨拶ならば

        「立春とはいえまだまだ風の冷たい今日この頃」云々。

        けれど相変わらずのこのぬくさ。

        どうも落ち着かない。

        やっぱりちゃんと冬を通っておかなきゃ。

        というわけで掲句に導かれて

        ナビも知らないこの道へ。

         

        ああほんと、濡れている。

        それが雪どけか

        乾かない雨か

        はたまたなにものかの涙のあとか。

        もう少し奥へ進む。

         


        (「川柳びわこ」第680号/びわこ番傘川柳会 2020年2月)


        今日の一句 #422

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          食物の連鎖の中の豚の位置   板垣孝志

           

           

          さてあなたはどう考えますか、

          と問いかけられているような一句だ。

          豚コレラのニュースもよぎるけれど

          関係ないかもしれない。

          しかしながら作品ににじむ危機感。

           

          生きとし生けるもの食物連鎖でつながっている。

          その連鎖になにかが起きているとしたら。

          豚の位置、そして人間の位置はどこにあり

          いまどんな状況なのだろう。

           


          (「川柳葦群」第52号/2020年1月)


          今日の一句 #421

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            ともだちに返す二三度ふりまわし  松永千秋

             

             

            何を借りたかは書いてない。

            けれどたぶん

            ふりまわしたりしたらアカンもんであろうとは

            想像がつく。

            じゃあなんでふりまわす。

            ・・なんでだろうなあ。

            ともだちのことはちゃんと好きなのにね。

             


            (「晴」第3号/2020年1月)


            今日の一句 #420

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              話したり聞いたり幾度幾度でも  河野基樹

               

               

              明日1月17日で、阪神淡路大震災から25年。

              神戸に生まれ育ち、今も住むひとりとして、

              やはり思いはさまざまによぎる。

               

              時間とはなんと不思議なものだろう。

              当時のあんなに長かった1日、1日。

              以来1年、1年と重ねるうちに

              気がつけば早、と巡りきたような四半世紀。

               

              今日の作品は、震災の年に公募された

              「阪神淡路大震災復興祈念テーマ川柳  がんばろう神戸」の

              入選十秀のひとつ。

              ただただ実感のことばが、五七五の韻律にのり

              いっそう強く、一瞬で届く力を持つ。

               

              選者は故時実新子。

              神戸在住の川柳作家は、編集者の夫・曽我六郎とともに

              翌年、柳誌「時実新子の月刊川柳大学」を立ち上げた。

               


              (「時実新子の月刊川柳大学」創刊号/川柳大学  1996年2月)


              今日の一句 #419

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                お日さまがぐんぐんあるく 時間まで  佐藤みさ子

                 

                 

                季刊「川柳杜人」264号より引く。

                昨年末に届いた最新号。

                その扉を開くやいきなり目に飛び込んできたタイトルに驚いた。

                “「川柳杜人」終刊のあいさつ”。

                発行人・都築裕孝氏による巻頭言には

                「私たちは、2020年冬発行の268号を最終号とすることに

                 合意・決定しました。慎んでお知らせいたします。

                 残り一年間、心を込めた誌面作りをしようと確認し合いました。」

                 

                仙台を拠点とし、創刊72年を迎えるという歴史ある柳誌。

                一愛読者として、終刊はとてもさびしく残念。

                けれど、同人の方々がいかに「杜人」を大切にされてきたか、

                それゆえの「合意・決定」であることも

                ひしと伝わってきたご挨拶。

                こちらも残り一年、「心を込めて」拝読したいと思う。

                 

                さて掲句は、同人のおひとりである

                佐藤みさ子氏の作品。

                いろんな読みが可能だ。が、私は

                「お日さまと」ではなく「お日さまが」であるのに、はっとした。

                すなわちお日さまにも「時間」があるということだ。

                いわんや、われわれ、ひとつひとつのいのちにも。

                だからこそ「時間まで」の時間のかけがえのなさ。

                口ずさむめば、不思議なエネルギーが湧いてくる。

                 

                 

                (「川柳杜人」通巻264号/川柳杜人社 2019年12月)

                 

                *****************

                 

                お知らせです。

                岡山にて恒例の「西大寺会陽川柳大会」が開催されます。

                ふるってどうぞ。

                 

                第69回 西大寺会陽川柳大会

                 

                とき/令和2年2月11日(火)

                   午前9時30分 開場  午前11時30分 投句締切り

                   午後1時00分 開会  午後4時30分 閉会予定

                 

                ところ/西大寺ふれあいセンター

                   ・JR赤穂線西大寺駅より徒歩7分、

                    両備バス西大寺バスセンターより徒歩5分

                   ・駐車場 西大寺ふれあいセンター駐車場(同センター西隣り)

                 

                会費/1,500円(作品発表誌、記念品、呈)

                   ・昼食は各自でお済ませください

                 

                ※各題2句吐

                ※欠席投句拝辞

                ※各題 三才3句、佳作7句、初鳴き賞 呈賞(岡山県知事賞他)

                 

                兼題と選者

                【珍】  新家完司(鳥取県)

                【混】  芳賀博子(兵庫県)

                【切る】 徳長怜子(徳島県)

                【ガラス】田辺与志魚(広島県)

                【冷】  眇究作(倉敷市)

                【目前】 松本 藍(津山市)

                【ずばり】丸山威青(美咲町)

                【渡る】 しばたかずみ(岡山市)

                 

                主催 西大寺川柳社


                今日の一句 #418

                0

                   

                  本ひらくように白鳥翔び立てり  西田雅子

                   

                   

                  鮮明な映像。

                  冴え冴えとした光につつまれ

                  何百、何千の白鳥が翔び立つさまは圧巻。

                  しかしカメラはその中のたった1羽にフォーカスし

                  スローモーションで見せる。

                  本ひらくように、ひらかれる翼。

                  こんな風に、私も新しい物語へはばたきたい。

                   

                  本作は「新思潮」を引き継ぎ、

                  誌名新たにスタートした「琳琅」の巻頭句。

                   

                  (「現代川柳 琳琅」No.160/作家集団『琳琅』2020年1月)

                   

                  あけましておめでとうございます。

                  本年もどうぞよろしくお願いします。


                  今日の一句 #417

                  0

                     

                    この星に歯型残しているところ  新家完司

                     

                     

                    この星に、なにがしか爪痕を残そうとする人もいれば

                    歯型を残そうとする人もいる。

                    生きた証の残し方は人それぞれだ。

                    いやしかし掲句、

                    主人公の存外本気な噛りつきようが

                    なんとも健気で可笑しい。

                     

                    出典は、新家完司川柳集シリーズ、

                    6年ぶりの新刊『令和元年』。

                    老いや時代の変化も

                    大らかにユーモアたっぷりに詠まれる完司調に

                    ほっとしたり、はっとしたり。

                     

                     ともだちが育てた豆で豆ごはん

                     ツバメから嗤われているオスプレイ

                     神さまを呼んでいるのに蜂が来る

                     海の底までにんげんの手が伸びる

                     凹んでも飲めばポポンと元通り

                     

                    (新家完司川柳集(七)『令和元年』/新葉館出版 2019)

                     

                    ******************

                     

                    お知らせです。

                    新年早々こんなイベントが開催されます。

                     

                     第17回船団フォーラム

                     「俳句はどのような詩か」

                     

                     日時/1月12日(日)14:00〜17:00

                     会場/園田学園女子大学

                     

                     詳細はこちら

                     

                    当方も討論に参加します。

                    「俳句はどのような詩か」を考えることは

                    川柳がどのような詩か、を考えることにもつながるはず。

                    ぜひお気軽にご参加ください。

                     

                    さて「はがろぐ」に今年もお付き合いいただき

                    ありがとうございました。

                    どうぞ良いお年をお迎えください。


                    今日の一句 #416

                    0

                       

                      前菜も主菜もデザートもカボチャ  小林康浩

                       

                       

                      近所のスーパーへ行くと、いきなり華やかな苺コーナー。

                      その先に負けじとカボチャや柚子が陣取っている。

                      来る22日(日)は冬至。

                      子どもも巣立ち、もはやクリスマスケーキも

                      食べたり食べなかったりのウチながら

                      冬至は毎年ささやかに楽しんでいる。

                       

                      というわけで今回はカボチャを堪能できる一句です。

                      こちら今年10月に開催された「第24回川柳クレオ大会」の

                      「たっぷり」という題での入選句。

                       

                      可笑しい。

                      なにがしかよんどころなき事情で、

                      カボチャのフルコースを味わっている主人公。

                      「ほほう、これもカボチャですか」

                      「こんな繊細なデザートになるとは」

                      なんていちいち笑顔でうなずいたり驚いたりしながら

                      実はそれほど好きでもないカボチャを見事完食。

                      エライなあ。

                      とニヤニヤしながら、今年もほんにあと10日。

                       


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