今日の一句 #303

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    無党派と呼ばれる顔で持つ叛旗  金子すすむ

     

     

    結局世の中は1票から変えていくしかない。

    そんな矜持の叛旗が風にひるがえる。

     

    さてきたる日曜はいよいよ衆議院選挙。

    2極対決、はたまた3極対決なのか。

    争点によって対決構図の見え方も変わってくる。

    ニュースは接戦区の状況を伝え、

    やはり鍵を握るのは無党派層のよう。

     

     わが脚を撃つ一票となるのかも   井比砂山花

     一票を書く日は義理へ目をつむり  中村よし子

     

    気になるのは台風状況だけれど、

    あ、こういう手もありますね。

     

     期日前投票をしてもう自由  天根夢草

     


    (「三省堂 現代川柳必携」 田口麦彦 編  /三省堂 2001年)


    今日の一句 #302

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      失ったこころ後ろの正面に  藤本花枝

       

       

      ♪ 後ろの正面だあれ〜

       

      ぱっと振り向けば失ったこころ。

      作者はまさかと驚いたのか、

      ほっとしたのか。

       

      「ハイ、入れ替わりましょう」

       

      エンドレスに続く、かごめかごめ。

      無邪気な情景が

      なんともコワイ1句である。

       


      (「川柳びわこ」2017年10月号 びわこ番傘川柳会)

       


      今日の一句 #301

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        持ち上げてみると一番軽い人  月波与生

         

         

        ぷっ。

        吹き出してのち、時節柄でしょうか。

        政治家さんの、あの顔この顔が浮かびます。

         

        発言や存在感は重量級、超重量級でも

        持ち上げてみると・・?

         

        とまあ、まったく笑いごとでも他人ごとでもない

        このたびの選挙ですが、

        ますます耳目を集めているのは確か。

        「劇場」でまだまだ何が起きるのか。

        その劇場と地続きにある、国民の明日。

         


        (「柳都」826号/2017年10月 柳都川柳社)

         


        今日の一句 #300

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          缶ピース燻らす男とした議論   村田素子

           

           

          70年代がよみがえる。

          煙草。それも缶ピース。

          男の吐く強烈な紫煙と過激な理想にむせながら

          時を忘れて議論したあの頃。

           

          若かった。

          そして愛してた。

          ボロボロに傷つけ合うほどに。

           

          もはや遠い記憶に

          今もうっすらと残る傷あと。

          そっとふれると、

          ほろ苦く甘い疼痛。

           

          と、今日の一句を映画のように味わえば

          余韻の中にもかすかな痛み。

           


          (「現代川柳」第57号/2017年9月 現代川柳研究会)

           

          *************************

           

          お知らせです。

          この秋、NHKカルチャー京橋(大阪)にて

          「坪内稔典・言葉をめぐる3つの対話」が開催されます。

           

          俳人・坪内稔典氏が3人との対話を通して

          言葉の世界により深く、そして楽しく関わります。

          「はらはら、どきどきの時間」にぜひご参加ください。

           

          ◆第1回 10/29(日)「万葉集の言葉」上野 誠(万葉学者)                

          ◆第2回 11/12(日)「川柳の言葉」 芳賀博子(川柳人)                

          ◆第3回 12/10(日)「絵手紙の言葉」内藤美穂(日本絵手紙協会公認講師)                

           

          くわしくはこちらまで。

          https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1133934.html


          今日の一句 #299

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            厚底を売って心配する靴屋   小林愛穂

             

             

            「安室奈美恵、来年9月に引退」

            えっ。

            思わず声が出た。

            NHKのニュースでも即日特集で報じ、

            コトの大きさを物語る。

            アムラーを生み出したときのように

            早すぎる引退もまたなにか社会現象化していくのだろうか。

             

            ミニスカートに厚底ブーツ、茶髪のロングヘア―…

            そんなアムラーファッションが世を席捲したのは

            もう20年以上前。

            ひと世代下のコたちがどっとこのスタイルで闊歩、

            ガールズパワーを炸裂させてたっけ。

             

            さて掲句。

            出典は「三省堂 現代川柳必携」。

            テーマ別の秀句集として2001年に編まれ

            「社会」の項目には「厚底」もある。

             

            飛ぶように売れる厚底靴を店頭に補充しながら

            よくこんなので転ばないねえ、大丈夫かねえ、の靴屋さん。

            これも確かに時代の1句だ。他にも

             

              宇宙語を交わして厚底が歩く  松田順久

             

            さてもアムロちゃん。

            常にアップデートを繰り返しながら、奇跡の40歳。

            これからの1年、どんな風を吹かせてくれるのか。

            未知なるカウントダウンが始まった。


            (『三省堂 現代川柳必携』田口麦彦 編/2001年 三省堂)


            今日の一句 #298

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              鍵町にそんな女が居ましたか  時実新子

               

               

              姫路文学館で「没後10年 川柳作家 時実新子展」が始まった。

              http://www.himejibungakukan.jp/

               

              姫路は鍵町の文具店に嫁いだ新子。

              多忙な日々のなかで、ふと出会った川柳。

              そしてそこからのまっしぐら。

              新子展の初公開資料の中に

              文具店「まるとや」の写真も

              あったのはうれしい。

               

               鍵町は夜から雨のバス通り

               鍵町で子を生み割った皿の数

               

              店の前はバス通り。

              裏手には拘置所があり

              句会などで遅くなると拘置所の長い塀の続く路地より

              帰宅したという。


              (『時実新子全句集』/大巧社)


              今日の一句 #297

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                PS裏口は開けておきました  竹内ゆみこ

                 

                 

                仕掛けてますね。

                 

                本当は一番いいたいことを

                あえて追伸で。

                あくまでさりげなく、

                あ、そうそう、それからねっていう風に。

                 

                おりしも今夜、しのび入るには

                ほどよい月明かりのようです。

                あ、それも計算ずく?

                 


                (「三省堂 新 現代川柳必携」田口麦彦・編/三省堂)


                今日の一句 #296

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                  宇宙軌道を回りつづける駄句冗句  高橋かづき

                   

                   

                  この世界に毎日どれほどの句が詠まれているんだろう。

                  そのほとんどが藻屑と消え、

                  後の世まで残るのは何年に1句あるかないか。

                   

                  なんてことをかつて誰しもが1度は考え、

                  虚しく吐息をついたことがあるんじゃないだろうか。

                   

                  ところがネットの普及で

                  まったく逆のことが起こるようになった。

                  ネット上にアップすれば

                  どんな駄句だって残し、拡散し続けることができる。

                  気がつけば宇宙に飛び出し

                  軌道に乗って回り続けてしまうかも。

                  作者の死後もずっと、ずっと。

                   

                  消えることより、

                  消えない、消せないことの恐ろしさ。

                   

                  あ、でも。

                  現時点では誰にも相手にされない「駄句」であっても

                  100年1000年…と軌道を回り続けているうちに

                  時代が追いつき、「名句」になる可能性もある。

                   


                  (「垂人」31号 2017年8月

                   /編集・発行 中西ひろ美・広瀬ちえみ)


                  今日の一句 #295

                  0

                     

                    鶴になる紙を急がせてはならぬ  村井見也子

                     

                     

                    紙を急がせてはならぬ。

                     

                    まるで手の中の紙が、自らの意志で

                    鶴になろうとしているかのよう。

                    一心に、渾身の力をもって、痛みをもって。


                    ただならぬ緊張感を湛えた本作は

                    作者の第2句集『月見草の沖』から引いた。

                    初句集『薄日』から26年ぶりの上梓となる。

                     

                     連れ舞いのおりふし水の音を聴く

                     他人には見せぬ強さで菜を漬ける

                     秋茄子の傷をだいじに食べている

                     月見草の沖へ捧げるわが挽歌

                     まだ樹液匂う仏を彫り上げる

                     

                    哀調を帯びた郷愁、しんしんと。

                     


                    (『月見草の沖』村井見也子/あざみエージェント 2017年)


                    今日の一句 #294

                    0

                       

                      わっしょいと言いたくなるよお片付け  真島 芽

                       

                       

                      今年5月に出雲で開催された

                      「はばたき川柳会 100号記念川柳大会」の入選作品の1句。

                      題は「わっしょい」で、

                      作者は佐賀県から一家でお越しの小学5年生。

                      私も大会に参加していて

                      披講を聞いた瞬間に

                      お、そうきたか、と思わずうなった。

                       

                      大人たちも呻吟させた難題を

                      しっかり自分に引きつけてぴたっと着地。

                      そしてこのユーモアに

                      「大人顔負け」なんて形容はそぐわず

                      もうシンプルに川柳としておもしろい。

                       

                      さあてお盆も終わったし、

                      こちらもお片付けするかな。

                      わっしょいと自分に気合を入れて。

                       


                      (「はばたき川柳会 100号記念川柳大会」句会報 2017年)

                       


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