今日の一句 #294

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    わっしょいと言いたくなるよお片付け  真島 芽

     

     

    今年5月に出雲で開催された

    「はばたき川柳会 100号記念川柳大会」の入選作品の1句。

    題は「わっしょい」で、

    作者は佐賀県から一家でお越しの小学5年生。

    私も大会に参加していて

    披講を聞いた瞬間に

    お、そうきたか、と思わずうなった。

     

    大人たちも呻吟させた難題を

    しっかり自分に引きつけてぴたっと着地。

    そしてこのユーモアに

    「大人顔負け」なんて形容はそぐわず

    もうシンプルに川柳としておもしろい。

     

    さあてお盆も終わったし、

    こちらもお片付けするかな。

    わっしょいと自分に気合を入れて。

     


    (「はばたき川柳会 100号記念川柳大会」句会報 2017年)

     


    今日の一句 #293

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      シベリアの男やすらぐ𠮷井川  森中惠美子

       

       

      「川柳番傘」最新号に掲載された1句。

      前書に「土居哲秋逝く」とある。

       

      本年6月に番傘同人、土居哲秋さんが逝去された。

      大正14年生まれ、享年92歳。

      名作家を輩出した岡山県は津山番傘の会長として

      「川柳つやま」誌の発行に全力をもってあたり、

      またことあるごとに、シベリアのこと、

      平和の尊さを戦争体験者として語られていたという。

       

      そんな哲秋さんが今年の6月号に

      こんなタイトルのエッセイを寄せられていた。

      『「時実新子」没後10年に憶う』。

      森中惠美子さんや岡山出身の時実新子との交友、

      また新子が姫路で創刊した「川柳展望」に

      2号から参加した、その当時の思い出がつづられていた。

      一度お目にかかってお話を伺いたかったお一人だ。

       

      生涯現役の川柳人。

      8月号の同人自選欄にも句を寄せられている。

       

       栄光の力は天寿より強し

       自分との戦春梅雨から真夏

       心しめらす梅雨なら長い方がよい

       極限が書ける川柳そして今


      (「川柳番傘」2017年8月号/ 番傘川柳本社)

       


      今日の一句 #292

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        ちゃんと嘘つけば正しいやまびこに  小林康浩

         

         

        思わずニヤリ。

        好き放題な叫びに、いささかの嘘をまじえて返してこそ

        耳に心地よき「正しい」やまびこになれるのか。

         

        ところでオウム返しはコミュニケーション術のひとつという。

        「実は○○なんだよ」

        「へえ、○○なんですか」

        しかしその返し方にちょっとしたワザを加えると

        さらに相手の本音を引き出せるのかもしれない。

         

        さて作者は本作を含む10句で

        現代川柳研究会主催の第5回「現代川柳作家賞」大賞を受賞。

        作者ならではの情趣ある諧謔が冴えている。

        受賞の言葉に曰く

        「これを機に、もっと切迫感ある川柳を詠みたいと思います」

         

         狂気への手続きとして摘むれんげ

         夕立のようなお別れならいいが

         過去じゃなく今どん底の人求む

         何の鍵だろう何でも開いてゆく


        (「現代川柳」第56号/ 現代川柳研究会 2017年7月)

         

        *************************

         

        ◆兵庫県の姫路文学館にて

         企画展「没後10年 川柳作家 時実新子展」が開催されます。

          会期 2017年9月9日(土)ー10月15日(日)

         

         時実新子が川柳を始めた地、姫路での企画展。

         玉岡かおるさんの講演会や

         担当学芸員の方による展示解説会も予定されています。

         姫路城もすぐ近く。遠方の方もぜひどうぞ。

         http://www.himejibungakukan.jp/events/event/tokizaneshinko-10after/

         


        今日の一句 #291

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          ごめんねと一途な人を裏返す  若林よしえ

           

           

          ひょいっと、まるでコインみたいに裏返す。

           

          そう、一途な人はいつも前向きで真摯で明るくて

          ときどきちょっとめんどくさい。

           

          ごめんね。

          こっちは今そういう気分じゃないもんだから。

           

          裏返された人はきょとん。

           


          (「現代川柳」第56号/ 現代川柳研究会 2017年7月)


          今日の一句 #290

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            弓道部らしき一群弓を背に  松井文子

             

             

            日常のさりげないシャッターチャンスを

            パシャッとものした句。

            弓道部「らしき」の抜け感と

            「弓を背に」の緊張感のバランスがよく、

            青春のみずみずしさを湛えている。

             

            さて、いよいよ夏休み。

            十代にとってはまさに日本の夏、部活の夏、

            の始まりである。

             

            当方、中学時代はバスケット部に所属していた。

            って何十年まえの話と比較するのもなんだが

            いまどきの部活事情には驚く。

            朝から夕方まで、ときに土日も返上って・・。

            このモンダイ、いろんな場で論議されているけれど

            個人的には、もうちょっとぼちぼちやってもええんちゃうん、と思う。

            友だちと映画行ったりプール行ったり、

            ただただぼーっ、とする時間も

            かけがえのない「ザ・夏休み」だったから。

             


            (「現代川柳 新思潮」No.145/ 作家集団『新思潮』 2017年7月)


            今日の一句 #289

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              母の恋封印したか忘れたか  萩原奈津子

               

               

              ちょっと向田邦子の短編を思わせるような一句だ。

               

              母の恋に気付いた娘。

              娘としてはいささか複雑ながら

              同じ女性として密かに応援もしていた。

              が、時は経ち

              今目の前の母はおだやかに微笑んでいる。

              あの恋は封印したのか、

              それとももう忘れてしまったのか。

               

              なんて、一句を娘の気持ちで、

              また母の気持ちで

              一篇を編むように読む。

              タイトルはやはり「母の恋」として。

               


              (「川柳葦群」第42号/ 川柳葦群 2017年7月)


              今日の一句 #288

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                笹舟に揺れて東京駅に着く  重森恒雄

                 

                 

                笹舟、か。

                寄る辺なさや、

                そこはかとなき旅情がにじむ。

                 

                目的はなんだろう。

                ゆらりゆらりと揺れながら

                なにを思っていたのだろう。

                 

                そして東京駅。

                 

                駅につくなり

                笹舟もさっきまでの感傷もかき消されたはずなのに

                句には詩情の余韻が残る。

                 


                (合同句集『輪舞の森』/川柳大学 2005)

                 


                今日の一句 #287

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                  ふるさとが昨日はあった茜雲  山河舞句

                   

                   

                  昨日届いた「川柳杜人」最新号は山河舞句追悼号。

                  今年3月に急逝された氏は

                  この仙台を拠点とする老舗柳社の発行人でいらした。

                   

                  また舞句さんは「川柳大学」の会員でもあり、

                  私も何度かお目にかかったことがある。

                  鋭い社会吟で常に問題提起しつつ

                  大会などで顔を合わせると、いつも気さくでにこやかで

                  そしてお声はさすが元局アナのハリと艶。

                  その個性と魅力で川柳大学にとってもなくてはならない存在だった。

                   

                  杜人の巻頭に再録された作品を味わいながら舞句さんを偲ぶ。

                   

                   沖縄の基地から梅雨になる日本

                   九条はまだある雨の投票所

                   前線の向こうも兵を焼く煙

                   

                  東日本大震災の折には、今日の一句をはじめ

                   

                   避難所の赤子泣け泣けたんと泣け

                   三月の呼び出し音が鳴る瓦礫

                   それは見事な虹の真下の三号機

                   

                  一方、こんなユーモラスな作品も。

                   

                   どちら様も少し不満な披露宴

                   三時間妻を待つのを愛という

                   恋人と逢う日は外す万歩計

                   

                  編集後記には

                  「今号から発行人・都築裕孝を中心に、

                   悲しみを力にかえて進んで行きます」

                  今秋11月4日(土)、仙台にて

                  「川柳杜人」創刊70周年記念、山河舞句追悼句会が

                  開催される。

                   
                  (「川柳杜人」2017年夏号 通巻254号/川柳杜人社)


                  今日の一句 #286

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                    稽古屋の猫は扇子でたたかれる   若柳潮花

                     

                     

                    ニャ〜ゴ。

                    先日、ある川柳大会で「猫」の選者を務めて以来、

                    つい猫の句に目がとまってしまう。

                     

                    今日は橘高薫風の『なにわ川柳 この一句』から引いた。

                    本書、以前にもちょっとご紹介したが、

                    名吟家にしてまこと目利きの薫風さんが

                    近現代の川柳から秀句を選りすぐり、鑑賞を加えたアンソロジー。

                    初版は1983年(昭和53)で、1999年(平成11)に再版されている。

                     

                    せっかくなので、薫風さんの鑑賞もまるごと引かせていただこう。

                     

                     踊りのお師匠はんの愛猫である。

                     座布団の上で無精をきめこんでいたら、

                     お稽古人に追われる羽目となる。

                     舞扇でやられることもあろう。

                     軽い調子の穿ちが利いて、踊りとは限らぬものの、

                     稽古場の華やいだ雰囲気が伺えておもしろい。

                     

                    まさに。


                    (『なにわ川柳 この一句』」橘高薫風 1983年)

                     


                    今日の一句 #285

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                      ブランコを止めて良い子は帰ろうな   千葉世相児

                       

                       

                      郷愁を誘われるなあ。

                      かつてはこんな風に声をかけてくれる

                      近所のおじさんやおばさんがいた。

                       

                      さてこの子、どうしたのかな。

                      日が暮れてもきゅっと口を結んで、ブランコをこぎ続けている。

                      ひょっとして友だちとケンカでもしたか。

                      なんてあたりも察して、

                      「帰ろうな」のさりげないやさしさ。

                       

                      いつからか、

                      子どもを1人では外で遊ばせられない時代になり、

                      だから掲句も懐かしく、あたたかく、

                      そしてちょっとせつない。

                       


                      (「柳都」822号/柳都川柳社 2017年6月号)


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