今日の一句 #431

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    花便り何の予定もない四月  林 操 

     

     

    「川柳びわこ」最新号に掲載されている

    課題吟「四月」の入選句より引く。

    まさに今年の4月だなあと読む。

     

    花便りが届くいい季節。

    なのに何のお出かけ予定もない。

    カレンダーにも書き込みひとつなくて

    まあしかし世の中この事態では致し方ないか、

    と主人公と一緒に吐息つきつつ、

    けれどこんな非常時が続いてみて

    身近な花のやさしさがしみる。

    駅前の桜やチューリップに

    ベランダのパンジーに

    心なぐさめられながら

    とにもかくにも4月が始まった。

     

     嘘つけず始まる四月おおくま座    宮井いずみ

     マスク外し四月の空気思いっきり   川村美栄子

     四月ですとにかく種を蒔きましょう  今井和子

     

     

    (「川柳びわこ」第682号/2020年4月  びわこ番傘川柳会)


    今日の一句 #430

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      「まいった」と言えば出てくる探し物  上藤多織

       

       

      わざわざカッコ付きの「まいった」。

      もうほんとに声が出ちゃったんだろう。

      すると、たちまち勝ち誇ったようにあらわれる探しもの。

      いやまったく、あるある、の1句だけれど

      探しものといえば

      先人もこんな名句をものしている。

       

       無い筈はないひきだしを持つて来い  西田當百

       

      「番傘」の創刊同人、西田當百(1871−1944)の代表作のひとつ。

      初心の頃に読んだ瞬間、思わず笑って膝打ったっけ。

      以来、失せものがでるたび

      この句がよぎり、ひきだしをごそっと引っこ抜いたりしている。

       


      (「現代川柳」第72号/現代川柳研究会 2020年3月)


      今日の一句 #429

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        裏側に模様があれば人ですね   赤石ゆう 

         

         

        では模様がなければAIとか?

        と、つい想像が飛躍する。

        人ならば誰しも裏側に模様がある、

        としたらその模様は生まれつき?

        性格の不一致とかいうのは

        もしかしたら模様の不一致なのかも。

         

        本作は川柳ゼミナール・うごの

        自選句集『うごうた』からの1句。

        うごは秋田県の羽後に由来する。

        メンバーみなさんのうた好きが伝わってくる

        あたたかなアンソロジー。

         

         盃を置くと男が終わりそう      中川 浩

         口実はあとからタクシーが来たわ   斎藤泰子

         はなびらがこんなに多い本のなか   村尾恒美

         流されていたのか泳ぎ切ったのか   ちえこ

         愛として受け取る無限無重力     茉莉亜まり

         あの場所にただ頬杖をつきにいく   佐藤春子

         鮮やかな虹を出したりしまったり   佐渡真紀子

         


        (『うごうた 川柳ゼミナール・うご 自選句集2020』

             /川柳ゼミナール・うご 2020年)


        今日の一句 #428

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          世界からサランラップが剥がせない  川合大祐 

           

           

          たとえば掲句の鑑賞はこんな風にはじまる。

           

           透明で薄いサランラップは一見はかなさそうに見えるが、

           冷凍保存や電子レンジにも対応できるほどの強靭さを

           持っている。

           

          ・・と、この続きは樋口由紀子さん編著の

          新刊アンソロジー『金曜日の川柳』でどうぞ。

          本書はウェブマガジン「裏『週刊俳句』」での

          人気連載が書籍化されたもの。

          六大家時代から現代にいたる333句が収録され、

          樋口さんならではの楽しい読み解きとともに

          「川柳」っていうジャンルのおもしろさも

          新発見できるはず。 

           

           「穿ち」「軽み」「おかしみ」と

           その先へつながる現代川柳の世界

           

          とは帯のコピー。

          川柳ビギナーの方も、通の方も、ぜひ。

          あ、拙句も掲載されています。

           


          (『金曜日の川柳』樋口由紀子 編著/左右社 2020年)


          今日の一句 #427

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            のりたまの黄色くらいの春にする  早川柚香

             

             

            のりたまの黄色くらい、ね。

            いいなあ。

            ほんのりあたたかく、せつなく、

            なんともほっとする、あの絶妙の色合い。

            穏やかな春が今ほんに待ち望まれている。

             

            出典は『川柳ねじまき #6』。

            「ねじまき句会」より年に1度発行されている会誌で

            発行人は、なかはられいこさん。

            メンバーの自選20句やエッセー、連句や

            句会実況など、読みごたえたっぷりに

            メンバー17名の個性がずらりと並ぶ。

             

             南無不可思議光水中で切る花の茎  なかはられいこ

             原人と歩く黄昏放物線       犬山高木

             春あさき口内炎がぽっと咲く    中川喜代子

             右足にさくら前線湿布薬      黒川利一

             プチ家出もう帰ろうと骨が鳴る   丸山 進

             無職でも冷やし中華ははじめない  櫻井 誠

             向日葵の群れに会釈をして通る   安藤なみ 

             待ってます紐の長さをかえながら  米山明日歌

             迷宮に押し込められる五十肩    三好光明

             月までの距離を測っている人魚   岡谷 樹

             ゆくゆくはぽんぽんだりあの楽隊  妹尾 凛

             元の棚に戻す星座とハイヒール   青砥和子

             つぶやきは十中八九熱帯魚     猫田千恵子

             原作にない友人をみるにつけ    二村典子

             小雪降るときちがう声でいうとき  八上桐子

             回文のようにあなたを好きでいる  瀧村小奈生

             


            (『川柳ねじまき #6』/ねじまき句会 2020年1月)


            今日の一句 #426

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              この国の鍵がぽとんと落ちている  工藤青夏 

               

               

              開けるための鍵か。

              閉じるための鍵か。

              とにかくとても大事な鍵であるには違いない。

              一体いつからここに落ちているんだろう。

              そして見つけた者が

              とるべきアクションとは。

               

              掲句、青森を拠点とする川柳グループ「青い実の会」の

              アンソロジー『青のメモリー 2019』より引く。

              年に1度発行されているアンソロジーの

              できたてほやほやの第6号。

              32名の会員の自選20句が収載され、

              会のこの1年の切磋琢磨がぎゅっと詰まった1冊。

               

               四月って春なんだよね世の中は    前田悠遊

               七日目の蝉が静かに書く趣意書    菊池 京

               涅槃にはたぶん偽名の人ばかり    藤田めぐみ

               メーテルと隣り合わせの五能線    齋藤あや子 

               弱虫にやさしいメリー・ゴーランド  碾鸛石

               


              (アンソロジー『青のメモリー 第6号』

                   /青い実の会 2020年)


              今日の一句 #425

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                いざこざの小さな町につくしんぼ  水野のぶ子 

                 

                 

                小さな町ゆえのいざこざに

                つくづくうんざりしつつ

                今年の初つくしんぼに

                「あ」。

                 

                主人公は、やっぱりこの町を

                愛しているんだろう。

                この町に訪れる

                小さな春も。

                 


                (『現代川柳かもめ舎アンソロジー WAVE 2009-2018』

                     /2018年)


                今日の一句 #424

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                  まだ何も出来てないからまだ希望  田辺与志魚 

                   

                   

                  てらいのないポジティブさが

                  すとんと腹におちる。

                   

                  もっとも、「まだ希望」と書くにいたるまでには

                  きっといろんな葛藤があったはず。

                  そしてひょっとしたら。

                  こんな風に句に書くことで

                  「もうトシだから」なんて

                  ついネガティブになりがちな自身を

                  うんにゃ!と奮い立たせているのかも。

                   

                  まだ何も出来てないけど、

                  ではなく

                  「出来てないからまだ希望」。

                  深い吐息からの鮮やかな転換。

                   


                  (『川柳作家ベストセレクション 田辺与志魚 逃げのびてラストシーンの中にいる』

                    /新葉館出版  2018年)


                  今日の一句 #423

                  0

                     

                    濡れているナビの知らない冬の道  重森恒雄 

                     

                     

                    はや立春も過ぎた。

                    例年のご挨拶ならば

                    「立春とはいえまだまだ風の冷たい今日この頃」云々。

                    けれど相変わらずのこのぬくさ。

                    どうも落ち着かない。

                    やっぱりちゃんと冬を通っておかなきゃ。

                    というわけで掲句に導かれて

                    ナビも知らないこの道へ。

                     

                    ああほんと、濡れている。

                    それが雪どけか

                    乾かない雨か

                    はたまたなにものかの涙のあとか。

                    もう少し奥へ進む。

                     


                    (「川柳びわこ」第680号/びわこ番傘川柳会 2020年2月)


                    今日の一句 #422

                    0

                       

                      食物の連鎖の中の豚の位置   板垣孝志

                       

                       

                      さてあなたはどう考えますか、

                      と問いかけられているような一句だ。

                      豚コレラのニュースもよぎるけれど

                      関係ないかもしれない。

                      しかしながら作品ににじむ危機感。

                       

                      生きとし生けるもの食物連鎖でつながっている。

                      その連鎖になにかが起きているとしたら。

                      豚の位置、そして人間の位置はどこにあり

                      いまどんな状況なのだろう。

                       


                      (「川柳葦群」第52号/2020年1月)


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