今日の一句 #355

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    もうなんど紙ヒコーキを飛ばしたか  ひとり静

     

     

    逢いたい人めがけて

    逢いたい、逢いたいって。

     

    あるいは

    わたしはここにいるよ、

    お願い、誰か助けてって。

     

    こんな風に

    今日もあちらこちらの窓から

    紙ヒコーキが飛ばされている気がする。

     

    いくつかはネットの中を飛び交ってもいたり。

     

    掲句は句集『ひとり静 海の鳥空の魚とわたくしと』

    より引く。

     

      消しても消してもうっすらと補助線

      手を伸ばしみどりの人に触れてみる

      羊羹のひとりに深き夜の色

     

     

    (川柳作家ベストコレクション

     『ひとり静 海の鳥空の魚とわたくしと』 

      /新葉館出版 2018年)


    今日の一句 #354

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      これまでを思えば奉仕ただ奉仕  中村郁枝

       

       

      感謝の一句。

      のようで愚痴の一句かも。

       

      「これまでを思えば」

      すなわち、これまでさんざんお世話になったんだから、とか

      これまでなんとか息災にやってこれたんだから、とか

      自分に言い聞かせでもしないと

      やってられない「奉仕」なのかも。

       

      とつい、意地悪な読み方をしながら

      こういうことあるよねー、

      とニンマリうなずいている。

       

       

      (「川柳びわこ」びわこ番傘川柳会 2018年10月)


      今日の一句 #353

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        酒樽の中で休んでいる記憶  若林よしえ

         

         

        「休んでいる」が可笑しい。

        この軽さ。

        ただ休んでいるだけだから

        熟成なんていう過程になっているかどうかは

        わからない。

         

        さてもうどのくらい樽の中にいるんだろ。

        気がつけば何年、

        いや何十年と経っていたりして。

         

        ひと様の記憶ながら

        ちろっと舐めさせていただきたい気もする。

        ちょっとこわいけど。

         

        掲句「現代川柳」若林よしえ特集から。

         

         

        (「現代川柳」第63号/現代川柳研究会 2018年9月)


        今日の一句 #352

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          M78星雲へ帰るバス   芳賀博子

           

           

          はい、今回は拙句で恐縮ですが、

          特報です〜♪

          このたび新句集を刊行いたしました!

          題して『髷を切る』。

          15年ぶり、2冊目の句集となります。

            

           春暮れる消える魔球を投げあって  

           ひきちぎるためにつないでいる言葉

           ストローと私だけになる九月

           お金なさすぎーって女子高生ジャンプ

           混沌のここが心臓ここが肺

           あ、録画するのを忘れてた戦争

           

          といった作品を収載しまして、ナウオンセール♪

          ご注文はAmazonやお近くの書店等で、ぜひ。

           

           

          (句集『髷を切る』 芳賀博子/青磁社 2018年)


          今日の一句 #351

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            月光のように見つめてくれる犬   前田邦子

             

             

            中秋の名月は今月24日だそうで

            今回は月にちなんだ1句を。

            と、月光犬(と勝手に命名)にご登場願う。

            すなわち月光のごとくミステリアスな眼差しをもつ犬だ。

             

            作者はきっと癒されているのだろう。

            そしてお互い見つめ合っているのだろう。

            その距離感がいい。

             

            そんな一人と一匹を

            ここから眺めている

            ちょっとさびしくて穏やかな時間もいい。

             

             

            (句集『ポポポ』 前田邦子/編集工房 円)


            今日の一句 #350

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              口角の両はじにいる父と母   泉 紅実

               

               

              だから油断すると

              つい口角は下がってしまうのか。

              なかなかに説得力があるなあ。

              ときどき左右のバランスが崩れたりもして?

               

              父母への愛やら屈託やらが

              ユーモラスに詠まれた句に

              微笑を誘われつつ、

              はて私の口角はどうなっているだろう、

              と手鏡を見る。

               

              ぎゅいっと笑って、

              はい、今しっかり口角を持ち上げました。

               

               

              (アンソロジー『輪舞の森』/川柳大学 2005年)

               


              今日の一句 #349

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                手と足をもいだ丸太にしてかへし  鶴 彬

                 

                 

                プロレタリア、反戦の川柳で知られる鶴彬の代表句。

                今年は鶴彬の没後80年にあたり

                さまざまな顕彰が続いている。

                 

                鶴彬は1909年(明治42)年石川県河北郡生まれ。

                十代半ばで川柳を知り、

                後に井上剣花坊の「川柳人」に身を寄せる。

                しかし1937年(昭和12)、発表作が特高の目に入り

                治安維持法違反で逮捕された。

                翌年9月14日、収監中に赤痢で死去。享年29歳。

                 

                 ざん壕で読む妹を売る手紙

                 暁をいだいて闇にゐる蕾

                 屍のゐないニュース映画で勇ましい

                 胎内の動き知るころ骨がつき

                 

                句から鳴り響く警鐘。

                今もジャンルの枠をはらって熱い支持を受ける川柳作家が

                「今こそ鶴彬」と新たな注目を集めている。

                 


                今日の一句 #348

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                  若い頃は夏と冬しかなかったよ  濱山哲也

                   

                   

                  これってどういうことだろう。

                  たとえば夏はサーフィン、冬はスキーに明け暮れ、

                  そのために1年が動いていた、みたいな。

                   

                  なんて考える前に、

                  一読笑ってうなずいてしまった。

                  サーフィンもスキーもやらないけど、

                  確かに青春のあの頃は・・ね。

                   

                  けれどいつしか、穏やかな春と秋にこそ

                  心身ほっと息をついたり、

                  やっと、ごそごそやる気になったり。

                  とすれば、これからがオンシーズンですね、ご同輩。

                   

                  さて掲句も収載されている濱山哲也句集。

                  近頃笑いが足りてないという方には

                  たちどころに効く一冊です。

                  さらに、しみじみ成分もたっぷり。

                   

                   今はもう飛行機雲が結べない

                   人妻は好きだが妻は苦手です  

                   両親の如雨露から出てくる苦言

                   人間は水と誤解で出来ている

                   祈る人一億 神は八百万

                   


                  (川柳作家ベストコレクション

                  『濱山哲也 おっとっとおっととっとと生きている』

                   /新葉館出版 2018年)

                   


                  今日の一句 #347

                  0

                     

                    沖縄も総理出さねばならんでしょ  大田かつら

                     

                     

                    出典は川柳句集『沖縄(ウチナー)を返せ』。

                    先般、ある句友よりすすめられた1冊だ。

                    2年前に上梓された句集だが

                    自民党総裁選も近づいているせいか

                    掲句がタイムリーに刺さる。

                     

                    作者は沖縄生まれで沖縄在住の大田かつらさん。

                    柳壇の要職を務めつつ、

                    地元、琉球新報川柳壇の選者でもある。

                     

                     終わりなき遺骨を拾うボランティア

                     オスプレイ国会前に配備せよ

                     人間のエゴがジュゴンの海奪い

                     どの神に祈ればイクサ終わるのか

                     人はなお核に怯えて核作る

                     

                    五七五に込められた

                    まじりっけなしの願い、祈り。

                     

                    あとがきに曰く

                    「今この気持ちを川柳に託して発信したい。

                     そして、一人でも多くの人の賛同を得て、

                     反戦平和の沖縄の礎の一助になればと思いました」

                     


                    (川柳句集(第2集 時事編)『沖縄(ウチナー)を返せ』

                     大田かつら/私家版 2016年)


                    今日の一句 #346

                    0

                       

                      アンパンマンいつもお空を飛んで来る  江島谷勝弘

                       

                       

                      そう、通常は。

                      けれど、ときに山道をわしわし登って

                      助けに来てくれることもある。

                       

                      昨日、山口県で行方不明になっていた2歳の男の子が

                      無事に発見された。

                      もうほんとに、ほーっと胸をなでおろしましたね。

                      ご承知のとおり、発見したのは

                      大分から駆け付けた78歳のボランティアの男性。

                      男の子の家族には

                      「私が抱きしめて直にお渡しします」と約束し、有言実行。

                      さらに発見後のインタビューの発言も経歴も

                      いちいちクールすぎて、まさにヒーロー。

                       

                      で、ふと思い出したのが、

                      アンパンマンならぬジブリ映画「紅の豚」の

                      こんなキャッチフレーズです。

                       

                      「カッコイイとは、こういうことさ。」


                      (『三省堂 新 現代川柳必携』田口麦彦編/三省堂)

                       

                      **************************

                       

                      お知らせです♪

                       

                      この9月からリビングカルチャー倶楽部・神戸教室にて

                      新しい川柳講座を開講します。

                       

                      「レッツ川柳 〜こころを詠む575」

                      https://living-cul.com/course/a01100000110pAyAAI/

                       

                      川柳の基本のきから始める新講座です。

                      川柳はまったく初めてという方、

                      初めてじゃないけどもう一度初心にかえってという方、

                      ぜひご一緒に、レッツ川柳♪

                       


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