消しゴムを拾ってからの永い縁 金子喜代
足元にころころ転がってきた消しゴム。
拾ってみれば斜め左に座るAちゃんのだった。
「はい」
「あ、ありがとう」
教室で初めてかわすことば。
そこからふたりは友だちになり、そして・・・
さてAちゃんは女の子か男の子か。
それによって思い描く展開も変わってくるのだけれど、
まあ「永い縁」になったわけだ。
こういうこと、あるよなあと
ほのぼのあたたかく読むか、ふっとほろ苦く読むか。
桃咲くや後ろの正面いつも母
幻のあの子がせがむ汽車ぽっぽ
林檎剥くナイフに目玉映しつつ
生還のごくんと喉を通る水
2012年度「かもめ舎」の「鴎盟大賞」に続き
2013年、第1回「現代川柳」作家賞を受賞した金子喜代の第一句集。
一句一句がタイトルのごとく『一人芝居』の濃密な世界を構築する。
(『一人芝居』金子喜代/かもめ舎川柳新書 左右社 2015年)